西国巡礼

西国巡礼

西国巡礼とは

はじめに

西国巡礼

西国の札所寺院は今も昔も広く一般庶民の信仰の中心であります。また苦悩に満ちた現世を生きる私たちの心の支えでもあり、その魅力は私たちの心を惹きつけて止みません。今日なお、おいずるを着て集印掛軸や納経帳を持って各寺院を訪れる人は後を絶たず、千二百年にもおよぶ歴史を経て益々盛んに巡礼が行われています。
今熊野観音寺はその西国三十三ヶ所霊場のうち、第十五番の札所となっていて京都の市街地では最初に訪れる札所です。
ここでは西国三十三ヶ所観音霊場巡礼についてご案内いたします。

巡礼のおすすめ

巡礼のおすすめ

近代的物質文明の時代にあって今こそ心の癒しが求められている時はありません。科学がいかに進歩し便利で豊かな時代になろうとも、私たちの人生の苦悩は減るばかりか、ますます癒しがたい形で私たちに忍び寄って来ます。
そんな時代に、観音様の光明は私たちの心に安らぎを与え不安や悲しみをとり除いて下さいます。また静寂な環境の中で澄み切った空気を呼吸しながら歩むことが、身体や心をどれほど健康にしてくれるかはかり知れません。そればかりか殺伐たる時代にあって、み仏に活かされていることを知り心から信じることが、子供から大人にいたるまでの健全な社会を築く上で最も大切なことなのではないでしょうか。
今こそ、観音様の聖地である西国巡礼をなさることをお勧めいたします。

西国巡礼の歴史

西国巡礼の歴史

西国三十三の札所巡礼は大和長谷寺の徳道上人によって始められたと伝えられています。今日西国霊場の中興の祖と仰がれるのは、花山法皇(968-1008)です。十九歳のときに出家され比叡山に上り、書写山に性空上人を尋ね熊野那智にもたびたび御幸されています。
このように天台・真言などの高僧や修験者らの間では修行の場を求めて、諸霊場を遍歴する人たちが多かったものと思われます。これらの人々によって西国の札所巡礼が益々盛んになりました。
現存する最も古い西国巡礼の記録は、三井寺前大僧正行尊(1055-1135)の「西国巡礼手中記」ですが、これによると現在の札所寺院名がそのまま挙げられています。札所番は時代により変わったこともありますが、現在の札所番は室町時代ごろに定まったとされています。当山は西国霊場第十五番の札所に列せられています。

巡礼をはじめましょう

巡礼のスタイル

かつての巡礼のスタイルといえば昔の芝居などにも登場するように、白衣を身にまとい手甲脚絆をつけ、笈摺(おいずる)を羽織って笈(おい)を背負い、菅笠をかぶって手には金剛杖を持つというのがもっとも典型的な姿でありました。この白衣姿は、み仏の前では全ての人々が平等であることを示すのだそうです。
また、この笈(おい)というのは、行脚僧や修験者・巡礼者などが仏具や遊行生活に必要なものを納めて背中に背負う箱のことです。また、笈摺(おいずる)とは笈を背負うときに背中の摺れるのをふせぐため、着物の上に着た薄い羽織のようなものを言います。
今日では服装にこだわることはありませんが、華美にならず清浄なものでかつ歩きやすい服装が良いでしょう。いかに車で巡れるといっても、札所寺院は高いところにあるお寺が多く駐車場からかなりの距離の坂道や石段を登らなければならないところがたくさんあります。履き物も足になじんだものを履きましょう。

巡礼の持ち物

持ち物は、念珠(数珠)・勤行をされる方はお経本、ご宝印(ご朱印)を受けられる方は、納経帳(朱印帖、集印帖ともいう)・納経軸(朱印軸)、そして笈摺などを適宜持って行きます。ほかに納札(おさめふだ)を用意されても良いでしょう。
今日ではこれらをバッグやリュックサックなどに詰めて持ち歩きます。
納札は今では紙製ですが、もともとは木製の札でお堂の柱などに打ちつけていたそうです。あるいは千社札をお堂に貼り付けることもありましたが、今日では文化財保護の観点から打ち付けたり貼り付けたりすることは控えるほうが良いでしょう。各札所には納札を納める箱が用意されています。

御納経

御納経

各札所を参拝した証として、納経帳や納経軸・笈摺・色紙などに、ご宝印(ご朱印)を押して戴き墨で本尊を表す文字を書き込んで戴きます。それを「納経」といいます。このご宝印には各札所のご本尊を現す種子(しゅじ)と呼ばれる梵字(仏さまの文字)が刻まれていて、それがそのままご本尊と同体となるのです。記念のスタンプとはまったく意味が異なりますので大切に扱ってください。
掛軸は全てのご宝印が集まると、表具師に依頼して表装し開眼供養を行ないます。そしてご自宅で慶事や仏事などが営まれる時に床の間に掛けてお参りをします。
また各札所にはご本尊様のお姿を紙に刷り込んだ御影(おみえ)と呼ばれるものも用意されています。これを集めることも盛んに行われています。

お参りのしかた

お参りのしかた

札所の本堂に到着したらまず先にお参りをいたします。お線香やお灯明・お賽銭などお志をお供えして、心静かにお参りしましょう。般若心経や観音経を知っている方はおあげになっても良いですし「南無観世音菩薩」とお唱えしたり、ご本尊のご真言をお唱えになっても良いでしょう。
お参りがすんでから納経帳などにご宝印を頂きます。その後、掛軸などは特に良く乾かしてください。たいてい納経所の近くにドライヤーなどが用意されていると思います。少し温かい風を当てると速く乾きます。
そして境内の諸堂にもお参りをして、聖地の静寂なる雰囲気を十分に味わって観音様のご利益を十分に頂いてから、次の札所へ向かいます。